「退職代行って、実は人事から嫌われるって本当？」
そんな声がSNSやニュースでも話題になっています。
仕事を辞めたくても言い出せない…そんな時の“救世主”として注目された退職代行ですが、企業側の本音はちょっと違うようです。
「書類も揃わないし、本人と一切連絡が取れない」
「中途採用の面接で、今後は利用歴も確認するかも」——
そんな厳しい声が上がる中、「もう退職代行は使えない…？」と不安になる方も多いはず。
そこで今回は、退職代行が企業に“迷惑”と思われてしまう理由や、利用後の転職活動に影響があるのか？など、リアルな視点で解説します。
退職代行サービスとは？
急増する利用者と背景
退職代行サービスとは、文字通り「会社を辞めたい」と考える人に代わって、退職の意思を会社に伝えてくれるサービスのこと。近年ではLINEやメールで申し込める気軽さもあり、20代～30代の若年層を中心に利用が増えています。
背景には、職場でのパワハラやメンタル不調、上司への恐怖心など「自分では退職を言い出せない」事情があります。
とくに女性の場合、「感情的にならないように冷静に伝える自信がない」「退職後も会社と関わりたくない」といった声も多く、精神的な負担を避けるために代行を選ぶ人が増えているのです。
また、コロナ禍を経て働き方が多様化したことで、「無理して我慢するより、自分らしく働きたい」と考える人も増加。そんな流れが、退職代行のニーズを後押ししています。
どんな人が使う？20〜40代女性にも広がる理由
「退職代行＝若い男性のもの」と思われがちですが、実は女性の利用者も多いんです。
家庭と仕事の両立に悩むワーママ、女性特有の人間関係に疲れたOL、そして長時間労働に苦しむ看護師や介護士など、さまざまな職業で広がっています。
特に共通しているのは、「これ以上、精神的に追い詰められたくない」という気持ち。
そのため、直接会社とやりとりするよりも、専門のプロに任せたほうが安心感があるという声が多く見られます。
一方で、その「安心」が、企業にとっては“困った問題”となっているのも事実なのです…。
企業が退職代行を「迷惑」と感じる理由
連絡なし・書類の遅延が与える業務への影響
退職代行を使われた企業の人事担当者からは、こんな声が多く上がっています。
「突然、代行業者から連絡が来てビックリした」「本人とは一切連絡が取れず、引き継ぎもできない」——。
退職の意思が伝わるだけで、その後の手続きや書類のやり取りは郵送やメールに頼るしかなくなり、業務が滞るケースも多々。
特に中小企業では「1人抜けるだけでも負担が大きい」のが現実です。
本来なら、退職希望者と直接話し合って退職日や引き継ぎ方法を決めるのがスムーズな流れ。
しかし代行を挟むことで、その調整ができず、現場の混乱や他社員への負担が発生してしまいます。
結果、「退職代行＝無責任で自己中心的」と捉えられることも少なくありません。
人事部の声「中途採用では利用歴を確認」
最近では「今後は中途採用の面接時に、退職代行を使った過去があるかも確認したい」との声も聞かれます。
理由は単純で、「またトラブルが起きたときに、逃げるように辞めてしまうのでは？」と心配されるからです。
もちろん、採用時に前職の退職方法を聞くこと自体には法的な制限があります。
ですが、職歴の空白期間や退職理由を詳しく聞かれた際、「実は退職代行を使いました」と正直に答えると、警戒されてしまうことも。
「退職代行＝問題社員」とは一概に言えませんが、企業によっては“リスク”として見られてしまうことがある、というのは知っておきたいポイントです。
退職代行を使ったことで不利になる？
中途採用の現場での見られ方
退職代行を使った過去が「転職に不利になるかも…」と不安に思う方も多いでしょう。
実際、人事担当者の中には「入社してもまたすぐ辞めるのでは？」「職場の問題に向き合わない人かも」と不信感を抱く人もいます。
ただし、すべての企業がネガティブに捉えているわけではありません。
「本人にしか分からない事情があるはず」と柔軟な対応をする会社もあり、どこまでマイナス評価されるかは業界や企業文化によって差があります。
ポイントは、「なぜ退職代行を選んだのか」を自分の言葉で説明できるかどうか。
単に「嫌だから逃げた」と思われないよう、背景や反省をしっかり伝えることで、印象を大きく変えることができます。
転職活動で伝えるべきこと・避けるべきこと
転職活動の面接で退職理由を聞かれた場合、「退職代行を使った」と正直に言うかどうかは悩ましいところ。
絶対に伝える必要はありませんが、空白期間や急な退職がある場合には、何らかの説明は必要になります。
そんな時は、「前職では退職時に心身ともに追い詰められていた」といったように、自分の状況や感情を誠実に伝えるのがおすすめです。
一方で、「前の会社が最悪だった」「上司がムカついた」などの悪口はNG。むしろ自己責任を強調し、「次はこうした環境で頑張りたい」と前向きな意志を見せる方が、信頼されやすくなります。
「退職代行を使ったから転職できない」と思い込む必要はありません。
正直さと誠意を持って伝えることで、不利な印象を和らげることができるのです。
円満退職とキャリアの両立はできる？
退職代行を使う前に考えるべき3つの視点
退職代行は「最後の手段」として有効ですが、いきなり使う前に少し立ち止まって考えてみるのも大切です。
まず考えてほしいのは、次の3つの視点です。
- 話し合いの余地は本当にないか？
退職の意志を伝えれば、案外あっさり受け入れられるケースもあります。怖がりすぎてチャンスを逃していないか見直してみましょう。 - 体調やメンタルが限界なら、まずは医師の診断を
精神的に追い詰められているなら、無理に会社とやりとりをせず、診断書を提出する方法もあります。 - 退職後に後悔しないか？
感情的に代行を使って辞めた後、「もっと冷静に話せばよかった…」と後悔する人も。
一時の安心よりも、自分の将来を考えた選択を。
これらを踏まえて、それでも「自分では無理」と判断したなら、信頼できる代行業者に相談するのは良い選択です。
信頼を失わずに職場を去るための工夫
退職代行を使う場合でも、少しの工夫で「印象」を大きく変えることができます。
たとえば、感謝の気持ちを伝える手紙や、最低限の引き継ぎメモを残すだけでも、「誠実な人だった」という印象を残せるのです。
また、代行業者に「本人の謝意を伝えてほしい」と依頼するのも有効です。
実際、「本人からの謝罪があっただけで印象が変わった」という人事担当者の声もあります。
退職は人生の通過点。だからこそ、できるだけ丁寧に、誠意ある形で終えることが、次のキャリアにもプラスになるのです。
退職代行利用者が語る「その後」
使って良かったと感じたケース
「どうしても直接伝える勇気がなかった」「体調が限界だった」——そんな状況で退職代行を利用し、「救われた」と感じる人は少なくありません。
特に多いのが、「退職を切り出せずに何ヶ月も悩んでいたけど、代行で一瞬で解決した」という声。
実際、精神的な負担から解放され、次の仕事にスムーズに移れたというケースも多く見られます。
ある30代の女性は、「職場の人間関係に耐えられず、毎日泣いて出社していたけど、退職代行を使ってようやく自分を取り戻せた」と話しています。
“逃げ”ではなく“前進の選択”として活用した結果、今は働きやすい職場で活躍中とのことです。
後悔やトラブルに発展した事例
一方で、「退職代行を使ったことを後悔している」という人も。
理由の多くは、会社との連絡をすべて断ったことによる“誤解”や“溝”です。
たとえば、書類の不備や未返却の備品などがトラブルに発展し、「最後まで迷惑をかけた」と自己嫌悪に陥るケース。
また、「次の転職先で退職理由をどう伝えればいいか分からず、ずっと引っかかっている」といった心理的なモヤモヤを抱える人もいます。
退職代行は“ラクな道”に見えますが、後処理や今後のキャリアにどう影響するかも考える必要があります。
だからこそ、「どう使うか」がとても重要なのです。
まとめ｜退職代行は「最終手段」と考えよう
退職代行は、心が限界に達しているときの“救済手段”としては非常に頼れる存在です。
しかし、その一方で、企業側の信頼を損なったり、転職活動に影を落とすリスクも否めません。
だからこそ、退職代行は「最終手段」として使うのがベスト。
まずは自分でできる範囲で伝える努力をし、それでも無理なら誠実な対応を心がけながら代行を活用する。
そのバランスが、あなたのキャリアを守るカギになります。
今後の働き方に悩んでいる方こそ、「どう辞めるか」も含めて、自分らしい選択をしていきましょう。
